西村伊作の建築 愉快な家

和歌山県新宮に生まれた西村伊作は今から90年以上も前に
「家族がすごす居間こそが、家のおおもとであらねばならない」
と提唱し、自ら設計していくつかの「愉快な家」を建てました。
そのころの家というのは家長が最も偉く、家の中では客を迎える応接間が重視された時代です。
体裁や見た目でなく、簡素でも趣味のよい、暮らしの主役である家族が楽しく過ごせる家こそが必要であると唱えたのです。つまり、現在のリビングが家の中心にあるというスタイルの先駆者といえます。
さらには子どもたちに自由で創造的な教育を、ということから、東京に文化学院を創設。
絵筆をとり、陶土をこねて服を作り、庭造りに料理に写真まで、芸術と生活を愉しむことを身を以て実践した人なのでした。
「愉快な家」を見ていますと、紀南の明るい風景の中の建物が非常に居心地よさそうなたたずまい。家具も自ら設計していますし、上下水道のない時代に自前で設備を作っていたり、まさに、超ハンドメイドおぢさん。
生活の場としての家はとかく「生活感」の出やすいところですが、その生活を芸術や料理、服作りやものづくりの感性を磨く場所と考えれば、ただの生活感は失せ、素敵なあたたかい雰囲気をつくるのかもしれません。
と思ったら、やはり暮らしに手を入れ工夫をし、自らつくるということはすごく大事なことなんですね。
ハンドメイドおぢさんを見習って生活しなくっちゃ。

愉快な家 西村伊作の建築 (INAX BOOKLET)